レビュー「動かして学ぶ!Flutter開発入門」

ソフトウェア

以下のFlutter入門書を購入したのでレビューさせて頂きます。

タイトル動かして学ぶ!Flutter開発入門
著者掛内 一章
出版株式会社翔泳社
ISBN978-4-7981-7736-6
価格3,800円+税

本書の対象レベル

2024年現在、Flutterの日本語の技術書はまだまだ少ないのが現状です。よって、現時点では好みに合わせて選ぶというよりは、技術書の対象レベルが1つ重視するポイントになると思います。

Flutterからプログラミングを始める方向けの本なのか、既に現場でFlutter開発を行っている方のレベルアップを図ることを目的とするのか、などです。

本書はその中間的位置付けで、他言語でのプログラミング経験がある方がFlutterで開発を始める場合に向けて書かれています。

前提知識

  • ICTの基礎的な知識やスキルを持っている方
  • プログラミングの基礎スキルを持っている方
  • Windows/macOSの基礎的なコマンドを使える方
「本書について」より

より具体的には静的型付けのオブジェクト指向言語の経験がある方向けだと感じます。型とは何か、オブジェクトとは何かといった説明はほとんどありませんので、前提知識として必要になります。

さらに、必須ではありませんがモダンなGUIフレームワークやフロントエンド系の開発経験もあるとなお良いと思います。FlutterはReactを参考にしているという話もありますので、そういったフロント系の経験があると理解の助けになるかもしれません。

全体的な感想

全体的に感じた特徴としては「内容を広くカバーしている」ということです。

Flutterの機能が解説されているのは当然ながら、テストやリリースと行った下流工程、ローカライゼーションやアプリ内広告などのビジネス面で重要な部分の解説もされているのが好印象でした。個人で開発をする場合、一人で全ての作業をする必要がありますが、その作業のほとんどがカバーされているのは入門書として安心感があります。

一方で紙面の都合もあるでしょうが、一つ一つの解説は最低限になっている場合もあります。Flutterの各クラスの詳細などの解説は最低限ですので、適宜詳細については公式ドキュメントを参照したりすることは必要になってきます。

全体的に広く浅くという印象ですが、ある程度他の言語やフレームワークで開発経験があり、不明点を調べたりすることが出来る方で、Flutterの最初の取っ掛かりを得るには良書だと感じました。

ボリューム感

本書は500Pを超えるボリュームがありますので、読破はそれなりに大変です。

私は本書からFlutterの学習を始めましたが、Chapter1「Flutterの概要」およびChapter2「Flutterアプリ開発の基本」(ここまでで約170P)を読了すれば開発は始められると感じました。

Chapter2までで開発環境の構築、UIの基本的な配置方法、アニメーション、画面遷移といったUIデザイン部分の基本を学ぶことが出来ます。

Chapter3ではスマートフォンの各機能(カメラやGPS等)の利用方法が記載されているので、必要に応じて索引的に使うという方法でも構わないと思います。

前提知識や環境構築でどれだけ時間を使うかはそれぞれだと思いますが、私は1日数時間程度時間を割いて約1週間でChapter2まで読了することが出来ました。

その他感じた点

下流工程の解説がある

本書はコーディングの工程だけではなく、テストやリリースについての解説があるのが良いと思います。リリースについてはiOS/Androidの両方について述べられており、開発の初期段階から最終段階までフォローされているため、個人で全ての開発をするという方には向いているのではないでしょうか。

実践的な内容も多い

サーバーサイド、デザインパターンといった実践的な内容に加え、アプリ内広告の組み込み、ローカライゼーションなどビジネス面で重要になってくる点についても網羅されているのが好印象でした。

特にサーバーサイド(Firebase)の部分にはかなりページ数が割かれているので、そのあたりを重視する方は一度書店で内容を確認しても良いと思います。

Dartについての解説は最低限

Dartの文法の解説については最低限に留められています。

Dartは少なくともメジャーな言語ではないと思いますので、躓く方もいるかもしれません。ただ私自身初めて学んでみて、Dart自体は特にクセが無く難しい言語であるとは感じませんでした。(まぁ、モダンな言語の大半がそうではありますが)

全体的な文法としてはC言語系の系譜であり、私はC系の経験が多かったので難しさは感じませんでしたが(C#の経験がそれなりに活きたように感じました)、静的型付け、オブジェクト指向、については前提知識として必要となると思います。

カラー

カラー印刷となっているため画面のスクリーンショットなどが見やすいです。

コードに差分を加える場合についても追加した行、削除した行、の色分けがされており見やすさが配慮されています。

せっかくカラーですので、コードにシンタックスハイライトが適用されていれば完璧だったと思います。

本の開きやすさについて

内容ではなく製本の問題ですが、翔泳社のNEXT ONEシリーズはややサイズが小さく、本書は厚みがあるので開きっぱなしにするのがやや難しいです。

コードのサンプルについてはDL可能なようですが、最初のうちは手で書き写して覚えたいという事情もあったのでやや使いづらい印象を受けました。結局私は譜面台に固定したりしながら使いましたが、製本上の工夫があればなお良いと思います。

最後に

オンラインで質の良い情報がいくらでも手に入る現代ですが、本という媒体は新しいことを体系的に学ぶにはやはり優れていると感じます。

やや時代錯誤かもしれませんが、今回あえて手でコードを書き写してみることで、理解が不足している部分が浮き彫りになったりする場面もありました。

Flutterは公式のドキュメントが非常に充実しているのが特徴ではありますが、日本語のまとまった情報というのはまだ少ないため、入門書を1冊持っておくといろいろな場面で助けになる可能性があると感じました。

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