フリーランス3年目が感じたメリット・デメリット

フリーランスのソフトウェアエンジニアとして独立して3年目になりました。最近では知人から「フリーランスってどうなの?」と興味を持ってもらえることも増えたので、この2年間で感じた実情やメリット・デメリットをまとめてみようと思います。

略歴

新卒でメーカーに入社し組み込み開発を経験後、ベンチャー企業にてデータ分析やWindowsアプリ開発を経てフリーランスとして独立しました。

最初の仕事は大手のフリーランスエージェント経由でご紹介頂き、とあるソフトウェア会社様のAI開発案件を受注。現在も継続中となります。

この記事では「元正社員」、「フリーランスエージェント経由」、「週5フルタイムの業務委託」の案件を行っている私の経験を元にお話させて頂きます。

結論

フリーランスになって良かったか?という部分からお話しますと、私はなってよかったと思っています。1案件目、たった2年の経験ではありますが、自分の性格に向いていると感じているからです。

簡単にメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

メリット

  • 一般に報酬が高め
  • 自分、エージェント、顧客のパワーバランスが取れている(極端に悪い環境が少ない)
  • 副業が自由

デメリット

  • フリーランスならではの支出(健康保険等)や雑務(確定申告等)がある
  • 正社員に比べ安定性が劣る

詳細

報酬について

早速下世話な話ですが、恐らく皆さんが最も気になると思われる部分です。

具体額についてはスキルや業界により大きく異なりますが、参考までに大手エージェントであるレバテックフリーランスでは平均年収が876万円(2024年2月時点の掲載情報)となっています。こちらで公開案件が検索可能なので、お持ちのスキルから収入のイメージを掴んでみて下さい。

業界、年齢、ポジション等によっては正社員の方が高いという例も多々あるとは思いますが、一般的に現場の業務を行う上では比較的高めの報酬と言えると思います。

月額表示だと結構高額な報酬が提示されている例も多いですが、多くの場合賞与は無し、交通費は自腹など、単純に正社員の条件と比較することは難しい点には注意が必要です。

厚生年金には入れず国民年金を支払うこと、健康保険も全額自己負担(正社員は通常会社と折半なので単純に倍程度になると考えて良いです)なので、お金の面を重視する場合には手取り収入がどのぐらいになるかを具体的にシミュレーションすることが大切になります。

求められるスキルについて

次に多い質問が「どのぐらいスキルがあればフリーランスになれるか?」です。こちらについては何かしらの開発実務経験が数年程度あれば独立することは十分可能です。

「特別なスキルや才能が求められるのではないか」と聞かれることも多いのですが、フリーランスだからといって特別なスキルは必要ないと思います。正社員でも求人により様々なスキルが求められるように、フリーランスでも案件により求められるスキルは様々です。

技術的スキルが最低限あることはもちろん大切なのですが、それ以上に業務を遂行する上で丁寧なコミュニケーションが取れるかという点も大切だと感じています。フリーランスで業務委託を行う場合、チーム内では少なからず「外部の人」という扱いになります。私の場合プロジェクトに関わる全ての会議に出席するわけではないため降りてくる情報が限定的になることがあったり、指揮命令系統も上司・部下という感覚とはやや異なっています。そのため正社員と比べると自ら積極的にコミュニケーションを取って情報を集めたり、報告したりする重要性は高まります。ただこれは別に難しいことはなく、丁寧に情報を共有しながら業務を行うことを心がければ問題ありません。

私の感覚としては、特別なスキルを持っていることより、普通に業務を遂行出来る能力が大切だと感じます。

労働時間と休暇について

大手のフリーランスエージェント経由の案件では報酬の支払い基準に精算幅という概念を導入していることが多いです。

案件によりますがフルタイム案件だと140~180時間/月ほどが設定されることが多く、この時間内であれば報酬は変わりません。この時間を下回れば報酬が控除され、上回れば上乗せされます。

1日8時間、月の稼働日が平均20日とすると月の稼働時間は160時間ほどになるため、±20時間ほど上下に余裕があることになります。この時間の範囲内であれば事実上の有給休暇を取ることが出来ますし、逆に多少みなし残業が入っているという解釈にもなります。

もちろん現実的に休めるかどうか、残業の量については現場により異なります。ここについてはエージェント経由で案件を取得すればある程度現場の空気感というのは事前に教えてもらうことが出来るので、稼働が安定している現場を選択することも十分可能と思われます。

パワーバランス

私がフリーランスで良いなと思った点が、自分、エージェントさん、お客さんの3者のパワーバランスが均等に取れているという点です。

正社員においても理想論としては労使のパワーバランスは取れているべきなのですが、実際会社の方が力が強いのが多くの組織の現実ではないでしょうか。

フリーランスの場合、その力関係が均等であるように感じています。

自分としては当然エージェントさん、お客さんと継続的に良い関係を続けたいので業務にきちんと力を注ぐのは当然です。エージェントさんとしても良くない環境の案件を紹介してはフリーランスからの信頼を失いますし、問題のあるフリーランスを紹介してもお客さんの信頼を失ってしまうため、私たちの能力や希望を適切に評価したうえで案件の紹介を行ってくれます。お客さんとしても例えばパワハラを行った場合にはもうエージェントさんに仕事を紹介してもらえないかもしれないので、コンプライアンスを大幅に逸脱するようなことをするのも難しいです。

私は転職も経験したことがありますが、転職の場合は自分としてもエージェントとしてもある意味「入社したら終わり」という関係です。フリーランスの場合は関係が継続することが前提となってくるため、少し事情が違うように思われます。

3者がお互いに「単にビジネス」という関係だからこそ、お互い適切な努力や問題のある行為への抑止力が働きます。ビジネスというとややドライに感じられる表現かもしれませんが、私としては本来労働とはこのような関係が良いように思えます。

本業と雑務について

正社員の場合、どうしても業務以外の雑務などが任されることが少なくありません。私も社員時代はやはりいろいろな業務を担当していました。

それが悪いことであるとは思いません。例えば清掃係や機材の管理、労組などの活動であっても私は仕事の息抜きにもなると思って前向きに取り組んでいました。

ただエンジニアの場合、自分のスキル向上に集中したいと考える人もいると思います。そういった方の場合、フリーランスは「本業に集中できる」良い環境であると思います。

しかしながらフリーランス、というより個人事業主ならではの雑務も存在します。それは帳簿付けや確定申告、各種社会保険を自分で手続きする必要があるなど、主にお金周りを自分で管理する必要が出てくる点です。どれも慣れない最初の頃はかなり手間に感じられますが、慣れてくれば自分の場合そこまで大きな負担とは感じていません。本当に技術に集中したいという場合には帳簿付けや確定申告を税理士に任せることも可能ですし、いわゆるバックオフィス全般の業務を請け負ってくれるサービスも登場しているため費用はかかってしまいますが対処は可能です。

副業について

個人事業主なので当然ながら副業は基本的に自由です。

最近は副業を解禁する会社も増えていますが、やはりいろいろと制限があることが多いのではないでしょうか。

私はキャリアを通じていろいろな経験を積んでみたいと考えているため、副業が自由である点は大きな魅力に感じています。アプリ開発を始めたことも、このブログを始めたことも、フリーランスでなければ実現出来なかったかもしれません。

安定性について

正社員より安定性が劣るという点については、一般的にフリーランスの大きなデメリットとして捉えられるのではと思います。

徐々に時代が変わりつつあるとは言え、正社員はまだまだ終身雇用が前提のように思えますが、フリーランスは基本的に数ヶ月程度の契約期間を更新しながら仕事をすることになります。

先方に能力不足と捉えられたり、組織に合わないと判断されれば短期で契約が終了する可能性は十分ありますし、フリーランス側に問題がなくてもプロジェクトが打ち切りになれば基本的に契約は終了となります。

この点は先方から見れば、言葉は悪いですが「便利な人材」であるということが出来ます。ただそのような事情があるからこそ、フリーランスの報酬が比較的高いというメリットに繋がっている側面もあります。問題があれば契約を打ち切れば良いからこそ、報酬を高めに提示できます。正社員の場合、特に日本では人材の流動性が低いため、能力があると思った人材に対しても最初から高い報酬を提示することがなかなか難しいという事情もあると言われています。

安定性については事前にエージェント経由で過去の契約の実績を聞くことで、ある程度リスクの回避は可能です。過去に契約が安定して続いていたのか、そういうことを事前に聞けるのもエージェントを通すメリットの1つになります。

安定性の低さはマイナスばかりではなく、いろいろな業務に挑戦する機会があるとプラスに捉えることも可能です。逆に言えばこのあたりをポジティブに捉えられる人がフリーランスに向いた人材かもしれません。

まとめ

フルタイムの業務委託案件を受注する場合、日々の働き方としては正社員と大きく変わらないと感じることも多々あります。

ただ要所要所で「ビジネスとしてやっている」という感覚は大事になってくると思います。それはお客さんとの関係構築もそうですし、帳簿付けなど個人事業主ならではの業務も当てはまります。

こういったことに興味があるのであれば、フリーランスという選択肢は決して正社員と比べて難しいものではありませんし、私は独立して良かったと考えています。しかし当然全ての要素が優れているわけではないため、どちらが良いかという話ではなく、向き不向きを考えて選択する必要があります。

私の意見が少しでも参考になれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました